論文のリポジトリ登録と著作権・出版社ポリシー・ライセンス
機関リポジトリに論文を登録(セルフアーカイブ)する際には、「どの版(バージョン)の論文を、いつ、公開してよいか」を事前に確認する必要があります。
非OAで出版した場合も、出版社・学協会がセルフアーカイブポリシーを定めており、それを確認・遵守することでリポジトリで論文を公開可能となります。
本ページでは、論文のリポジトリ登録と著作権・ライセンス・出版社ポリシーの関係についてまとめています。
目次
1.【要点】登録申請前に確認するポイント
2.セルフアーカイブとは
3.機関リポジトリに登録できる論文の「版」(バージョン)
4.出版社/学協会のセルフアーカイブポリシーの調べ方
5.クリエイティブコモンズ(CC)ライセンスについて
6.よくある質問
1. 【要点】登録申請前に確認するポイント
リポジトリへの登録申請前に、以下の3点を確認してください:
- リポジトリ登録する、お手持ちの論文原稿の版(バージョン):著者最終稿(アクセプトされた時点の原稿)/出版社版(出版されたバージョン)
- 出版社/学協会等との著作権譲渡契約の内容
- 著者最終稿を登録する場合、CCライセンスを付与する必要があるか→必要な場合、適切なCCライセンスを原稿に付与する。
Nuar-Assistを利用して登録申請する場合、図書館で事前に出版社ポリシーを確認し、以下の点については確認結果を反映しているため、登録可能な版(バージョン)のファイルを添付するだけでOKです。ただし、著作権譲渡契約の内容によっては図書館の確認結果と異なる場合があるため、ご自身でも確認の上、申請いただくようお願いします。
- 出版社は機関リポジトリへの登録を認めているか
- 登録できる論文の「版(バージョン)」はどれか(著者最終稿など)
- 公開禁止期間(エンバーゴ)はあるか
特に、著者最終稿を添付して登録申請するところ、出版社版の原稿と取り違えて申請する方が多いため、論文の「版(バージョン)」をよくご確認の上登録申請をお願いします。
2. セルフアーカイブとは
セルフアーカイブとは、著者自身が自身の論文を機関リポジトリや分野別リポジトリ(arXiv, PMCなど)に登録・公開することを指します。
学術雑誌に掲載された論文は、著作権譲渡契約によって出版社/学協会が著作権を有しているケースが大半ですが、出版社/学協会の定めているセルフアーカイブポリシーに従えば、オープンアクセス(OA)にしていない論文でも、著作権を侵害することなく、無料で公開可能です。
セルフアーカイブポリシーは、以下のような条件から規定されています。
・原稿の版(バージョン):著者最終稿/出版社版…
・公開場所:機関リポジトリ/研究者個人のWebサイト/あらゆるWebサイト…
・公開時期:エンバーゴ(論文出版後別の媒体での公開が禁止されている期間)の有無
・表示義務:DOI、出版社に定められた表示文
出版社/学協会によってこのポリシーは異なるため、特にリポジトリで登録を行う場合は権利侵害を避けるため注意する必要があります。
3. 機関リポジトリに登録できる論文の「版」(バージョン)
セルフアーカイブにおいて最も重要なのは、「どの版(バージョン)の公開がポリシーで認められているか」という点です。特に、出版社/学協会版PDFはすでにオープンアクセスになっているものでない限りリポジトリでの公開ができないため、注意が必要です。
著者最終稿の登録は出版社から認められている場合が多く、基本的には著者最終稿を機関リポジトリに登録することになります。
論文の「版」(バージョン)

| 版(バージョン)の名称 | 説明 | 機関リポジトリ公開 |
|---|---|---|
| プレプリント・投稿原稿(Preprint/Submitted) | 査読を受ける前の原稿 |
多くの出版社で「可」。ただし、即時OA義務化に対応したことにはなりません。 |
| 著者最終稿(Accepted Manuscript) | 査読を通過し、アクセプトされた時点の原稿 | 多くの出版社で「可」。ただし、エンバーゴ(公開禁止期間)がある場合や、CCライセンスを付与しなければならない場合があります。即時OA義務化に対応できる版です。 |
| 出版社版(Version of Record) | 雑誌掲載時のレイアウト、ロゴ、ページ番号が含まれる最終PDF | (既にオープンアクセスになっているもの等を除き)原則「不可」。 |
4. 出版社/学協会のセルフアーカイブポリシーの調べ方
国内外のデータベースを利用して、雑誌ごとのポリシーを確認できます。
主なツール
- Open Policy Finder:海外雑誌のポリシー調査に役立つツールです。Jisc(英国の高等教育・研究支援機関)が提供。
- 学協会著作権ポリシーデータベース (SCPJ):日本国内の学協会のポリシーURL等を検索できます。
- 出版社/学協会のWebサイト:上記ツールに掲載されている情報は最新でない場合があり、確認のため直接調べることを推奨します。
Open Policy Finderの使い方
海外雑誌のセルフアーカイブポリシーを調査する際に使います。日本語雑誌および日本語には対応していないサイトですのでご注意ください。(以下、スクリーンショットはOpen Policy Finderより引用)
1.トップページの検索窓に調査したい雑誌名(またはその雑誌のISSN)を入力し、虫眼鏡のボタンを押下して検索します。

2.検索にヒットしたものが1誌の場合は、直接そのレコード画面(3.の画面)が出てきます。2誌以上ヒットした場合は、確認したい雑誌のレコードを開いてください。

3.リポジトリ登録したい版(バージョン)のポリシーを確認します。「▽Show」ボタンで詳細を開きます。基本的には「Accepted」を確認します。

4.版(バージョン)の見出しにある条件(Option with…)と「Locations」(その原稿を公開・セルフアーカイブできる場所)を確認します。「Locations」に「Institutional Repository」またはそれに類する記述(下記)があり、かつ見出し・Embargo・Conditions等の条件を満たしていればその版(バージョン)の原稿を機関リポジトリに登録することができます。

上記の場合、出版から12か月間のエンバーゴ(公開禁止期間)を経過していれば、著者最終稿をリポジトリで公開することができます。
「Institutional Repository」以外にも、「Locations」に以下の記載があれば機関リポジトリでの公開が可能です。
- Any Website/Repository
- Institutional Website
- Non-Commercial (Institutional) Website/Repository
なお、「Named Repository」に機関リポジトリは入らないためご注意ください。
また、「Conditions」に記載のある内容は基本的に図書館でリポジトリ登録する際に対応します。(Citationとともに出版社版の掲載ページにリンクする、出版社に定められた記述とともにDOIや出版社版へのリンクを掲載する、など)
学協会著作権ポリシーデータベース(SCPJ)の使い方
国内学協会誌のセルフアーカイブポリシーを調査する際に使います。
SCPJはGoogleスプレッドシートとして提供されていますが、ここではその検索に特化したSCPJ Search(Google Looker Studio)の使い方を紹介します。(Googleスプレッドシート内で検索することも可能です)
1.SCPJ Searchにアクセスします。
2.検索窓に検索キーワードを入力します。(ジャーナル名、ISSN、学会名で調べることができます)
3.キーワードを入力すると検索結果が表示されます。
4.検索結果右側の「ポリシーURL」がある場合、各学協会・雑誌の機関リポジトリ登録対応に関するページや投稿規定等のページにリンクしています。

学協会ページでポリシーを確認する際は、以下の「出版社・学協会サイトでのポリシー確認」をご参照ください。
出版社・学協会サイトでのポリシー確認
Open Policy FinderやSCPJにある内容は古い場合があるため、念のため出版社等のWebサイトでもセルフアーカイブポリシーを確認するようにしてください。
各出版社・学協会、あるいはその雑誌のウェブサイトで、
- 機関リポジトリへの対応((Institutional)Repository)
- セルフアーカイブ(Self-Archive/Archiving)
- オープンアクセス(Open Access)
- 著作権や許諾(Rights and Permission)
- 投稿規定
にあたるような場所・記述を探すとポリシーが発見できる可能性が高いです。
ある程度探してもセルフアーカイブポリシーが不明の場合は、メール等で直接問い合わせたり、著作権譲渡契約書の内容を確認してください。
5. クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスについて
クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスとは、著作物の二次利用条件を簡易的に表示する、国際的に標準化されたシステムのことです。CCライセンスの付与を行うことで、ライセンスの条件の範囲内で研究成果の二次的な利活用を促進することができます。
各ライセンスについてよくご確認いただき、積極的な付与をご検討ください。
CCライセンスの種類
表示(BY)、非営利(NC)、継承(SA)、改変禁止(ND)の4つの条件を組み合わせた、6種類のライセンスがあります。ここでは、CCBYライセンスとCCBYNCNDライセンスの2種類を紹介します。
- CC BY(表示)
原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示することを主な条件とし、改変はもちろん、営利目的での二次利用も許可される最も自由度の高いCCライセンス。
- CC BY-NC-ND(表示-非営利-改変禁止)
原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的であり、そして元の作品を改変しないことを主な条件に、作品を自由に再配布できるCCライセンス。
説明文は右記サイトから引用:クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは | クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
ほか4種類のライセンスについても、上記サイトをご確認ください。
CCライセンスの論文への付与方法
CCライセンスは著作物の著者のみが付与することができます。
- 非OAで出版後、グリーンOA(リポジトリ)で論文を公開する場合(かつ著者最終稿の著作権が著者にある場合)
ご自身で選択したライセンスの表示を著者最終稿内に入れることで、ライセンスを付与したことになります。CCライセンス表示文の作成は以下のWebサイトからできます。
また、CCライセンスのマークはクリエイティブ・コモンズ トップページからダウンロードできます。
出版社/雑誌別のセルフアーカイブポリシーで、「リポジトリで著者最終稿を公開する場合は、特定のCCライセンスを付与すること」という指示がある場合があります。この場合は確実に付与していただくようお願いします。
リポジトリ上でもライセンス表示を行うことが可能ですが、公開されるファイル内にライセンスが記載されていることが再利用の観点から重要です。
Nuar-Assistの申請時に「二次利用条件の選択」欄がありますが、こちらは選択したライセンスに従って入力してください。ライセンスを付与しない場合は「選択しない」を選択してください。
- ゴールドOAで論文を出版する場合
出版社/学協会からライセンスの付与について照会があったタイミングでライセンスをご選択ください。
6. よくある質問(FAQ)
オープンアクセスFAQ>オープンアクセスにするには(機関リポジトリ・著作権など)にまとめています。
お問い合わせの前にご確認ください。